2月3日(金)は節分でしたね。
この日もとても寒い日でしたが、人権啓発事業として企画した講演会「子育ての中でさぐる しつけと虐待の違い」が無事終了しました。
場所は今回、開催にあたって補助をいただき協力いただいた、八幡人権・交流センター。
会場の後ろには京都八幡こどものひろばの活動の様子を見ていただこうと、子どもやお母さんの笑顔がいっぱいの写真を展示。
自己紹介をされる幸重さん。胸には虐待防止のオレンジリボンバッジ。
講師の幸重忠孝さんは
社会福祉士、スクールソーシャルワーカーとして教育現場で子どもの学校生活での支援をおこなっておられる一方で、
NPO法人山科醍醐こどものひろば理事長として山科醍醐子ども生活支援センターを開設し、子どもの貧困対策事業に力を注いでおられます。(この活動は新聞やTVなどメディアで広く紹介されているので、ご存知の方もいらっしゃるでしょうね)
幸重さんのプロフィール紹介から、講座が始まりました。
幸重さんの社会人としてのスタートは児童養護施設の指導員。
施設で子どもたちと生活するなかで虐待を受けて育ってきた子どもが人間関係の距離感の取り方がいびつであることを経験します。
その後、スクールソーシャルワーカーとして教育現場に入った時に、学校に施設で見たタイプの子どもたちと同じタイプの子どもが多いことに気づいたそうです。
施設で、学校で、子どもを救うのではなく、子どもが実際に住んでいる地域で子どもを救える形はないだろうか、と模索した結果が、子ども生活支援センターとして山科での実践に具体化していったのだそうです。
さて、本題に入って「虐待」とは何か子ども虐待の背景を探ります。
(講座の内容を細かに書くと、すごいスペースになるので、機会があればぜひ受講してください)
子どもの虐待の増加は近年顕著です。その背景には社会的変化が大きい。現在の日本は7人に1人が相対的な貧困問題を抱えているそうです。
※相対的貧困・・・最低限度の文化的生活レベルかそれ以下の生活のこと
絶対的貧困・・・低所得、栄養不良、不健康、教育の欠如など人間らしい生活から程遠い状態
皆さん、真剣な表情
子どもの虐待の実態を学んだうえで、さて、実際に虐待ってどんな状態をいうのだろう?
講師の10の質問に対して、これは●虐待と思う●虐待と言えないこともないかな?●虐待とは思わないの3択のシール投票で子ども虐待についての意識ワークショップをしました。
このワークでは虐待のとらえ方が人によって異なることがわかりました。
同じワークをしても、ワークを受けている集まりがどのようなタイプかで、出てくる結果はまた違うそうです。例えば子育て支援者の集団の場合と町内会の役員の場合とでは、明らかに違いが出るでしょう。中高年男性グループと子育て中のお母さんグループとでも全く違うでしょうね。
「虐待」といっても、子どもを持つ親であれば、客観的に見れば虐待に当てはまるようなことをした経験のある人は少なくないでしょう。
一方、虐待行為を重ねる人でも四六時中しているわけではない、子どもと楽しい瞬間を過ごすこともあるでしょう。
そう考えると「虐待」とは、適切でない子育ての時間が多いことと定義づけるのがふさわしいのではないかと幸重さん。
虐待をその期間や程度から総合的に判断するのは専門機関の仕事です。
もし、虐待を疑うようなことがあれば、それは専門機関に任せるべき、(児童虐待防止法では虐待の疑いがあると思ったときは、通告の義務があるとしています)
「虐待」のとらえ方に個人差があるように、地域はそれぞれ異なる価値観を持った人々が暮らしているところです。私たち市民は、そのような状態の親子を地域のネットワークで見守り、支援できたらいいと思います。
その後、地域でできる支援取り組み事例として、
山科醍醐こどものひろばが行っている
「生活困窮、養育困難家庭へのトワイライトステイ事業」の様子をビデオ紹介いただきました。
小さい子どもを連れたお母さん、スタッフが見守りながら、遊ばせるそばでママはお勉強
講座の最後は、幸重さんから絵本の読み聞かせをプレゼント
「おこだでませんように」 作:
くすのき しげのり /絵: 石井聖岳 /小学館
グッとくる内容に、全員が首を傾け、聞き入りました。
「子育ての中でさぐる しつけと虐待」は講演会とはいえ、講座という言葉が適切な内容。統計資料や法律などの資料を見ながらの2時間でしたが、みなさん、真剣なまなざしでメモを取っておられました。
今回の参加者は子育て支援関係者だけでなく若いお母さんたちも多く、子育ての世界に入ったばかりのお母さんも支援する側の視点で学ぶことができたのは、主催する側としてうれしいことです。
講師
幸重さんのブログにうれしいコメントを書いていただいたのでこちらもご覧ください。
たくさんいただいた感想から少し紹介・・・
☆育ってきた環境や世代によって虐待に対する考えが違うということがわかりました。子どもに愛情を注ぎ、家族みんなが仲良く入れるような環境をつくっていきたいと思いました。 最後の絵本すごくよかったです。(若いお母さん)
☆子ども虐待についての意識を新たにして頂いた。ネグレクトが増えているのを感じている(教会のCSの活動で)大いに参考になりました。 「おこだでませんように」の絵本。自分の子育てを思い出しました。良かったです。
☆今まで虐待の講演は、実態の紹介ばかりで暗い気分でしたが、このように前向きに子どもたちを助けていけるという話を聞き、明るい気持ちになりました。
☆小学3年生の息子がいます。いつもおこっています。「おこだでませんように」がわが子のようでっころにしみました。ほめてあげたいと思います。
☆「トワイライトステイ」の取り組みはすばらしいと思った。支援を必要とする人と支援したいと考える人の交流がうまく出来たら、無理せず、続けられる活動が可能なのですね。大変参考になりました。